①むち打ちとは
むち打ちは外傷性頚部症候群ともいい、交通事故に代表される大きな負荷が体に加わることで背骨の周辺にある組織が損傷することで首、頭、腕などに痛みや痺れ、運動障害といった症状が現れます。
交通事故などによる衝撃などによる損傷は時間が経ってから症状として現れることも少なくないので症状の有無を問わずに可能な限り早く受診してより大きな損傷やその他の問題が潜んでいないかをしっかりと確認してもらいましょう。
②むち打ちの症状
むち打ちの症状は大きな衝撃の直後から出る場合もありますが、数時間~数日間、長いものでは数週間経過してから現れる場合もあります。
主な症状としては首の痛み、運動障害、頭痛、倦怠感、吐き気、疲労感、めまい、耳鳴りなどがあります。
また、首の周囲には非常に重要な神経、血管が多く存在するため自律神経系の異常、腕の痺れ、力が入らないといった症状も出てくる場合もあるので痛みがないからといってむち打ちではないと判断してしまうのは危険ですので体のどこかに違和感を感じたらしっかりとした検査を受けましょう。
③むち打ち症状の原因
むち打ちは大きな衝撃から身を守ろうとする防御反応と大きな衝撃によって体に起きた変化に対応しようとする人体の適応機能によって起こる組織や神経の興奮、緊張によって症状が起こるとされていますが、残念ながらレントゲン、MRI、CTなどの画像診断ではその原因が特定されないことも現代でも少なくありません。
それは多くの場合画像診断のような静止画によって確認できるようなものが原因ではないためです。
現代で主流になっている医学では画像診断では骨や組織の大きな損傷や位置のズレを確認するため、骨、組織、関節の可動性の低下や機能の異常を画像診断による診断の対象とはしていません。
例えば本来伸縮するものが伸縮しない、本来30度動く関節が10度しか動かないなど画像診断での外見や位置が正常であってもその機能を損なっているため痛みや運動制限といった症状が出ることは当然と言えます。
昨今の研究でも椎間板ヘルニア、脳脊髄液の漏出、脳神経、脊髄神経、自律神経への過剰な刺激による異常興奮など多くのものによる関与が疑われ研究が続けられています。
ごちゃごちゃと書きましたがむち打ち症状の原因は「大きな衝撃によって起こった骨、筋肉、椎間板、靭帯、血管、神経などの組織の機能障害」となります。
単純に大きな衝撃といっても交通事故などではシートベルト、エアバック、事故の状況などによって複数の方向から複数の衝撃を受けることも珍しくないのでその影響は全身のあらゆる場所に起こる可能性があります。
限定的にはなりますが、症状から予測される原因の組織について少しだけ分類しておきます。
・首が痛い、動かせない、熱感がある→関節、筋肉、血管の損傷や機能障害
・頭痛、倦怠感→関節、筋肉、血管、神経の損傷や機能障害
・首や腕の痺れ→血管、神経の損傷や機能障害
④むち打ちの治療について
むち打ちに限らず外傷の治療にはいくつかの段階があります。
炎症が強い時期のであればその部位に対して刺激を加えることはその炎症を助長させることになりますので、物理的な刺激を加えず冷湿布や抗炎症剤や鎮痛剤で炎症や痛みを抑え、カラーなどを用いて可能な限り安静状態を保持することが必要になります。
炎症が引いた後であれば損傷した組織の修復と機能の回復のための本格的な治療を行います。
交通事故などの衝撃によって起きた組織の損傷を回復させるためには可能な限りその組織の血流を改善させ修復を促進してやる必要があり、そのためには周囲も含めた組織の柔軟性の回復、関節の機能回復、過剰に緊張している神経の抑制が必要になります。
組織の柔軟性の回復のためにはその組織を揉む、温める、鍼灸などの処置を行いますが人の体は筋膜に代表される膜によって全身が繋がっているため症状の出ている部分だけを緩めてもすぐに戻ってしまう場合があります。
関節の機能回復のためには周囲の筋肉、筋膜の柔軟性の回復はもちろんですが、骨と骨膜に付着する靭帯や関節包の機能も回復させる必要があります。
関節は骨格の構造によって可動範囲や角度が異なるため専門知識を有する訓練を積んだ治療家による骨の位置や角度の調整と関節包や靭帯の機能の回復が必要となります。
過剰に緊張している神経の抑制はその神経の通り道となっている部分の調整が必要になります。
神経は他の組織とは違い大きな可動性はありませんが周囲の影響を強く受けてしまいますので症状の出ている部位から障害されている神経を特定しその神経がどこで障害を受けているかを特定して治療する必要があります。
むち打ちというと首の治療を行うイメージの方が多いかと思いますがこれまで書いてきたように原因が首以外の部分であることも珍しくありません。
例えば原因が骨盤の関節の機能障害でむち打ち症状が起きている場合、首の治療だけを行っても回復するまでには多くの時間が必要になってしまいます。
症状のある部位にだけ注目するのではなく、全身のどこに問題があるのかをしっかりと検査して治療を行うことがより早く日常生活に戻ることの助けとなります。
そのためには解剖学と生理学はもちろん、人の全身の繋がりや機能に関する知識とそれに対応できる技術が必要になりますのでしっかりとした治療をお考えの方は一度受診を検討している施設に問い合わせをしてみて下さい。