エコノミークラス症候群とは
エコノミークラス症候群は深部静脈血栓塞栓症という正式名称からもわかるように深い部分にある静脈(主に下肢)に血栓が出来る病気です。
この血栓が出来た部位から流れてどこかでつまると塞栓という状態になりますが、エコノミークラス症候群で出来た血栓は肺の血管につまることが多く、そうなった状態では肺塞栓症となります。
肺塞栓症となってしまうと肺組織に栄養を送る血管が詰まるということなので、肺機能の低下が起き最悪の場合は死に至る病気ですのでその予防は非常に重要になります。
①エコノミークラス症候群の原因
エコノミークラス症候群はその名前の通り身動きのとりにくい環境で長時間同じ体勢でいることで起こります。
血栓は体を巡る血液の流れ場悪くなった部位に起こりますが下半身の末端は特に血流が停滞しやすい部位となります。
その血液の流れを滞りにくくするために重要な働きを果たすのがふくらはぎの筋肉なのですが、身動きのとりにくい状況に長時間置かれたり日常的に動かない状態が多いと血栓が形成されやすくなってしまいます。
大雨による土砂崩れや記憶に新しい東日本大震災などの災害で避難所などの狭い所での生活を余儀なくされたり交通機関を使った長時間の移動といった体を動かすことが困難な状況や、昨今では新型コロナウイルスの影響などによって増えてきたテレワークによるPC作業などを長時間動かずに行わなければならないような状況で起こりやすいためメディアなどでも頻繁に注意が促されています。
②エコノミークラス症候群の症状
エコノミークラス症候群では深部静脈血栓症の名前の通り静脈が詰まった時の症状、つまりうっ滞の症状である腫脹や痛みが出現し、この時の腫脹は怪我などで見られる赤っぽい腫脹よりもやや紫がかった腫脹になります。
この腫脹は血栓ができてしまった側に出るので全くないとは言えませんがほとんどの場合片側の足に腫脹や痛みが起こります。
この腫脹と痛みは静脈血が詰まることによって静脈血が局所にたまってしまい腫脹を起こし、その腫脹によって周りの組織が圧迫されて痛みなどが出ます。
また、血栓が移動すると局所の腫脹や痛みは軽減しますが前述の通り肺の血管に詰まって肺塞栓症になってしまうと胸部の痛みや呼吸困難といった症状を引き起こし、重度になると意識障害などを引き起こし最悪の場合心停止して死に至ります。
③エコノミークラス症候群の予防と治療
まず大前提として深部静脈血栓がある時にマッサージ等の物理的な刺激を加えることは禁忌となりますので絶対にやってはいけません。
血栓がある状態で物理的な刺激を加えてしまうとその血栓が移動してしまい肺塞栓症へと移行する危険性が極めて高くなるためです。
そのためエコノミークラス症候群に関しては体を動かしにくい状況でいかに予防できるかが非常に重要になります。
特に運動習慣がなかったりふくらはぎがカチカチに硬いといった方は検査を受けて血栓がないことを確認してから、もしくは血栓を除去できたことを確認してから予防を行うことをおすすめします。
予防法として一般的なものはストレッチになります。
足の指を膝に近づけるように手やタオルを使って引っ張ることでふくらはぎの筋肉はストレッチされるので時間と場所が取れる時に定期的に行いましょう。
またストレッチと聞くと伸ばす運動をイメージするかもしれませんがそれはスタティックストレッチなどと言われるもので、体(関節)を大きく動かすことによって筋肉や関節の可動性を緩めるダイナミックストレッチというものがあります。
ふくらはぎのスタティックストレッチを行うにはそれなりの場所が必要になりますが、ダイナミックストレッチであれば座れるだけのスペースがあればどこでも可能になります。
ダイナミックストレッチではふくらはぎの筋肉を対象とする場合は足の指を床に近づける運動と膝に近づける運動を交互に行いますが、可能であれば足先で円を描くように足首全体を動かしてあげると膝から下の筋肉全体の血流と柔軟性の改善につながりりますのでおすすめします。
なかなか運動が出来ないといった場合でもふくらはぎなどの筋肉を機械や人に揉んでもらったり温めたりすることで緩めておくことも予防につながりますのでデスクワークなどで運動不足気味の方は健康と予防のためにも定期的な運動やメンテナンスを検討してみて下さい。